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猫よりも私のほうがかわいい! 後編
前編からの続き

 息をすると温い空気が体に入ってくる。湯気のかかったもう一人の鏡華の顔を見るがこちらの顔には目もくれず、私の体を舐めるように見ている。目を合わせないことに不満をもらすが、私の目ヂカラが強いからだと相手にしない。私も目を合わせていられる自信がないゆえにそれ以上何も言わない。鏡華の肌は先程も言ったが、きめ細かくさらさらとしていた。相手の膝などに指を這わせると、こそばゆいと目の前の鏡華は笑みを浮かべ、自分が触られると同じように笑いがこぼれる。体は湯船に浸かっているため温かい。足は相手の足を挟む形で四つの足が横並びにくっついている。
 また、どちらが先に体を洗うか(スポンジが一つしかないため)でお互いに言い合いになり、相手をくすぐってどちらが先に声を上げるかで決めようということになる。これで遠慮なく相手の体に触れることができると二人の鏡華は気分が高揚する。
「さきに、笑ったほうが負けだからね」
「言われなくても、そっちこそ、すぐ負けないでよ」
 あらためて考えると自分が弱い、すぐ笑う所って、どこだろうかと考えながら相手の肌に指を這わせていく脇の下とか弱いってよく聞くけど、と脇の下に指を持っていく。そこをくすぐると相手も同じく脇の下に指を持っていってくすぐってくる。声を出すまいと口を閉じていると鏡華は太ももで指を這わせはじめた。自分の体にも彼女のくすぐりが染み込んできて思わず笑いそうになってしまう。自分が彼女に与える刺激と同じだけの刺激が自分に味わわされてしまう。胸の下の所を擦られると鏡華は耐えられなくなって小さく悲鳴を漏らしてしまう。相手に聞かれていないと思っていても、向こうも同じように悲鳴を聞かれていないと心で思っていることはバレバレだった。お互いの意識共有をしている二人はそれぞれ本音を言葉に出さず、心を相手に悟られまいと相手のくすぐりに耐え、さらに相手から心の底を勘ぐられまいと必死で相手からの心理戦に耐えていた。
 ほんのちょっとの差で私が先に笑ってしまい。勝者の鏡華は勝ち誇った顔をしていた。途端にこらえていた笑いを漏らしだしたが、勝者の余裕からか、こちらを気にせず遠慮なく笑っている。
 勝者の鏡華が先に体を洗って、敗者である私はその後に続いて洗う。勝者の鏡華は湯船につかりながら、こちらを見て私の体を目で這っていく。
「そんなに、見られたくないんだけど」
「失礼、後ろから自分の体を見られる機会ってなかなか無いから」
お風呂ではくすぐり合い以外は特に何もなく、お風呂から出ると狭い脱衣所で体を拭き合い、お互いの服を着て、また、静かに二階へと戻っていく。


 二階に戻って、最初にしたことはもう一度、薬の説明書を確認したことだ。別の鏡華はベットの上で一日の疲れを癒している。私が
「やっぱり、元に戻るためには両方が……エッチな気分になるしか…ないみたいだけど」
「それしかないなら、仕方ないよー。やるなら早く終わらせちゃおうよ」
「早くって…」
鏡華はこれからするだろうことに、顔を赤らめそんなファーストキスとか自分相手だったりエッチな気持ちになろうとすればいつも恥ずかしくて考えないようにしている場所にも手を触れなければならないだろうし、不安な気持ちより、なんでこんなことにという戸惑いの方が気持ちの大半を占めていた。
「そっちの私は、乗り気なのが癪に障るんだけど」
「私も早く元に戻りたいだけだから、変に思わないでよ」
えーっ、と信用できない気持ちを顔に全面に出すも、相手からの応対は冷たいものだった。同じ自分だから上手に絡みをやり過ごすのはどちらも得意らしい。姉さんからもよくされているから、反射的にしたことだろうけど。
 あまり目を合わせないようにして、お互いベットに上がっていく。慣れてない手つきで服の上から相手の体を撫で、時折チラリと相手の顔を見る。嫌そうな顔は私も同じだろうと想像する。変な親近感が逆に興奮を起こすのか相手の体を触っていると変にゾワゾワした感じが背中からやって来る。それは、触られていることよりもサラサラした肌に触れている事からくるものだが、今度は逆に触られていることに、肌から温かい感覚が来る。
「あたし、別に感じてないから」
「あたしだって、そっちこそ変な気、起こさないでよね」
と牽制してスカートの中から太ももに触れる。もちろんそんなこと他人からされたことなどないため、二人は終始、変な感覚に悩まされることになる。相手から愛されているわけでもないのに、触れられているだけで安心感と幸福感がお腹の奥の方から沸き上がってくる。
「バカっ、なにしてんの、早く済ませてよ」
「そっちこそ、変に気持ちいいとこ触らないでよ、声漏れるの嫌なんだから」
二人ともよく知った身体なので、どうされれば気持ちよくなるかは知っている。だが、それをすれば相手から変な気持ちになると非難をされ、どうしたらいいのかという気持ちに二人の鏡華はなってしまっていた。相手の鏡華のシャツの中へ手を差し込むと相手の腕も自分の身体をシャツの中から触ってくる。相手の首元と胸の上を撫でると自分の同じ部分も同じ刺激を受ける。服が膨らまないように気をつけると自然と体同士が近づくことになりお互いの息がかかる位置まで近づく、そうならないように顔を背けてお互いの服の中を触っていく。
「そろそろ、キスとかしたほうがいいんじゃない?」
「奇遇ね、私もそう思ってたところだよ、そっちからしてくれていいし」
「なっ、そっちの私だって、された事ないのに恥ずかしいことさせないでよ」
「えーっ、そんなの私だって同じだし、こんなのすぐできるもん」
お互いキスは気持ちいいという知識は知っていても、経験はしたことなどない。どうなるか分からないことは恥ずかしさのほうが勝るので、それは自分自身相手でも同じなのだ。
目を見ないようにもう一人の鏡華の口の端に唇を押し付ける。ドクドクする心臓とじんじんする下腹から恋人でもないのにキスをしたという罪悪感が責め立て、あんたも同じことするんだよという、被害者な目線を相手に送る。私が目を瞑ると、口の端に彼女の唇が触れているのを感じる。それはすごく長い時間触れていたような感じもあったけど、あっという間にそこから離れていってしまった。限界までバクバク言っている胸の奥は嘘をつけないとどこか冷静に感じながら、意識を盗み見られている感覚から相手も似たように感じているのを察する。
「てっ、こんなに、ゆっくりしてる場合じゃないって」
「なっ、そっちがゆっくりしてるからでしょ」
「そっちだって」
と力なくお互いに責任を押し付けてようやくベットに二人で並んで横になることになる。
「で、どうすんの」
「そんなの、知らないし」
「調べてよ」
「そっちも調べろっての」
スマホごと分裂していたので、お互いのスマホでそれぞれこれからどうするか調べる。
 必要な情報に行き着くと、どちらも顔を真っ赤にして
「そんなこと、できるわけないじゃん」
「これ、こんなのしたって、嫌な気分にしかなんないって」
聞かれないように小声で呟いてお互いの様子を知るために質問した。
「そっちは何か見つかったの?」
「あんたも、何かあったんじゃない?」
声の調子がおかしかったが、それには触れない。
「何からすればいいのかな♪」
「そうだね、分かんないよ♪」
見え透いた嘘だが、自分から仕掛けるのは良くないのは目に見えていた。こちらからは何もせずに向こうから自然にそれっぽいことをやってもらうのが一番早い。
「「私、そっちのことは疎いから、あんたがやってくれると嬉しいな」」
最後の方には声が裏返っていた。そんなに言われたら仕方ないと、覚悟を決めて
「「そんなに、言うんだったら仕方ないよね」」
と言い訳を言って、緊張しながらお互いの一番敏感な部分に指を持っていく。
「ここが、一番気持ちいいとこらしいけど、何も感じないよ」
「なんだろ、ここって触っていいとこなのかな」
性知識が小学生から進んでない二人にとって性感帯という言葉も聞いたことないだろうと思わずにはいられない。
「敏感なとこにはいきなり触れないであ、アソコのまっ、周りを触るって」
「……そ、そっか」
初めての相手が自分だというのも因果な話だが、薬をもらって飲んだのは自分だったので文句は言えない。乾燥したそこを擦っていると、先ほどの変な気分がぶり返して心臓の鼓動が激しくなる。明らかに恋をしてるのではないその反応に、戸惑いが増していくが一つ戻るためには仕方ないので考えないでその行為を続ける。皮の中から触って欲しそうにジンジンする敏感なところを押すとジワーっと下から上に快感が昇ってくる。
「今なんか来たっ」
「こんなの早く終わらしたいぃ」
奥から液体が溢れてくるほど愛撫を続けると、二人の興奮も小さな声が漏れるほどに高まっていた。
「あんた、気持ちいいからって手加減してる、早く終わらせてよ」
「そっちだって、手加減してるじゃん、私だけじゃないよ」
鏡華はその言葉で制限を突破らって、気持ちいい所への刺激を加速していった。どちらの鏡華も昇ってくる何かに罪悪感を感じて、早く終わらせたいという気持ちで恥ずかしさを紛らわせていた。時折漏れる声は刺激に快感を感じている声なので、もう一人に聞かれないように服で声を殺して、徐々に高まってくるその感覚を無くそうとイキそうになると別の場所を触り、それが返って二人を生殺しにしてしまっていた。慣れていない二人にとって薬の呪いの解除はそれだけでとても長い道のりだった。
「なかなか、イケないっ」
「うぅ、敏感なとこを触り続けるってできない」
刺激が足らなくてもう一度、唇を合わせてキスをする。身体を触れられて快感は感じているのだが、それがゴールに行かない分、体力ないのに無理だろうという気持ちが強くなる。
「あ〜、早くしてぇよ〜」
「あぁん、あたしにぃい、言わないでぇ、はぁんっ」
体を近づけて空いている腕でもう一人を抱きしめる。胸と胸の距離がゼロになり乳首が触れ合う
「また、変な感じ」
「もうやだよ〜」
極度の興奮に敏感な部分も皮から出てきて、下着が擦れるだけでビリビリが体全体に広がる。こんなに敏感な部分を無遠慮に触れられでもすれば死んでしまうのではないかと言うほどで、もちろんどちらの鏡華も触れるはずもなく。
「早くイかせてよ!!」
「そっちが先でしょ!!」
仕方なく、アソコの周りを撫でていると不意にそこからの感覚が爆発してしまうのではないかという感覚が身体を包みはじめた。
「あっ、あーー、いやっー、んんっ、んんーーー」
「何っ、あぁ、あっ、んんーーー、いあっーーー」
目の前がスパークして小さく腰が動き、二人はお互いの手によって初めてイカされてしまった。初めてのそれに呆然としてしまって、二人は気を失ってしまった。


 意識を取り戻すと、鏡華は一人に戻っていた。やったーと感激に浸る間もなく二人いた時の記憶が重なっていることに気づく二人が融合したために記憶も一緒に融合したのだろう。記憶が重なったため相手に抱いていた感情が筒抜けになり、鏡華はまた赤面してしまう。
 だが、薬の効果は一時的に解除されたに過ぎない。もう一人の鏡華自身にまた会うのも一日もしないうちに起こることになる。その先のことを考えるとここにいる鏡華は憂鬱になったが、触れていた肌の感触を思い出して、それもいいかと自分を納得させるようにした。
「また、アレしないといけないかな」
鏡華は下を見て二人の液体で湿ってしまったシーツをどうやって母に見つからずに処理できるかを考え始めた。




後日談
「もらった薬って実はあの後、お婆さんがいっぱいくれたんだよねー」
「よし、二人になったから早速使ってみよう〜」
エメラルドの薬をもらってからしばらくたった頃、鏡華はもう一度あのお婆さんに会い、今度はビン詰めされた先の薬をもらった。とりあえず二人で10錠ずつ薬を持って飲んでみようと二人の鏡華は今、話し合っていたところだった。
「どうなるんだろう?」
「一人10錠だから20人に増えるんじゃない。ゴクッ」
「ゴクッ」
と軽い気持ちで薬を飲むと、前の時と同じように身体が上半分と下半分で分かれていき、その別れた身体たちがまた別の二つの身体へと分裂していった。20人で止まると思っていた人数はその数を超えても増えていって鏡華たちは自分たちの分裂した彼女自身たちの数に圧倒されてしまっていた。
「なにぃー、どんどん分裂していくっ」
「まさか、これって20人よりもっと多くなるのっ!?」
「これだったら、あんなにいっぱい飲まなくても良かったのに!!」
「そんなの、今更だよ。こんなに増えたら家の中じゃ収まらなくなっちゃうよっ」
それぞれの鏡華がお互いに言い合い始めて鏡華のいた二階の部屋は場所がなくなり一階へと鏡華が押し出されていく、その全ての鏡華の顔が戸惑いと自分への呆れからくる顔へと変わっていて、それぞれ微妙に違うものの鏡華たちの髪型と部屋着である服と手に持っているスマホはすべて同じものに見えた。
元の一人に戻るためにはそのすべて鏡華たちが同時にイかなければならなくなり、それがもしも偶然に起こったとしてもそれだけで途方もないことだった。


ご感想などお待ちしております。
ではまたー
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【 2017/02/20 19:32 】

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