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猫よりも私のほうがかわいい! 前編
お久しぶりの明後日の狩人です。
今回は肌フェチな女性がもし分裂したら的なのを作りました。
喜んでもらえると嬉しいです。ついでにノクターンノベルズの方にも上げておきます。
感想の方はコメントお願いします。
ではどうぞー



「ペット飼えば?」
 友達の椎奈が私の行き場を失っている情熱に文句を言ってきた。
「でもさ、やっぱり私が撫でたり、抱っこしたり、ご機嫌取ったりな、妹が必要だと思うんだよ」
と私は言う。思春期にありがちな妹や弟が欲しいというありがちな思考パターンだ。人間誰しも一人の空間が続いている環境だと人恋しさも出てくるもの。私、野水 鏡華(のみず きょうか)はその妹欲しさに、友人である黒川 椎奈(くろかわ しいな)に相談をしていた。
「そんな簡単に、子供なんてできないんだから、ペットで我慢しなよ」
椎奈はそういうが、私は人肌の体温や髪のつやつや、肩や胴体の曲線を自分の指先で味わうのが一種の習慣のようになっていて、それ無しでは砂漠で水筒をなくしたように体が乾いていってしまうのだ。
「この、肌フェチが!寄るな!」
私が女の子の肌が好きだというと、椎名は変なものを見る目でこっちを見てくる。普通は男の肌が好きなもんなのという椎名の言葉に納得はするが、私の求めているものはそうではないのだと複雑な気持ちになる。
「妹がいればさ、朝昼晩触り放題じゃん」
と私が言うと
「お前の妹がかわいそうだ」
と椎奈がいう
「そうかな」
私には姉は二人いるのだが妹はいない。私が一番最後に生まれてきたので妹が欲しいと父に頼んでも、そうだなー、と曖昧な答えしか帰ってこない。姉たちは何かと忙しいらしく、いつも一緒にいようというとどこかに消えていってしまう。
「もー、私だっていっしょにお風呂入ったり、髪をとかし合ったり、一緒に眠る妹が欲しいんだよー」
と日頃溜まっていたものを大声で吐き出していると、座っていた公園という場所とは不釣合いな、占い師風なお婆さんがこちらを見ていた。ビクッと背筋が寒くなったけどニタニタと笑うお婆さんが持っていた不思議な雰囲気に私はその場所から動けずにいた。どことなく怖い感じを醸しながらお婆さんは話しかけてきた。
「お嬢さん、なにを悩んどるのかのぅ」
しわがれた声でそう聞かれてどうすればいいのか分からなくなった。
「あの、私、人の女性の肌が好きなのですが、姉たちにもそっけなくされてしまって…」
「そうかいそうかい、大変じゃのー」
お婆さんはそう言い、それから持っていた袋から何かを取り出して
「お前さんにぴったりかどうか分からぬがいいものがある」
とエメラルドの色をした薬のようなものを取り出した。
「これはな、昔の呪術者が作った相手を呪う為の道具だが、お前さんにはそれなりに役立ちそうだから、やろうと思っておる」
お婆さんは私の手のひらにちょんとエメラルドの薬を落として
「これが詳しい説明書じゃ」
と古い紙を手渡してきた。ご丁寧にどうもと心の中でつぶやき
「お婆さん、ありがっ」
と言った時にはお婆さんはその場所にはいなくなっていた。
「なんだったんだろ?」


 家に帰ると夕飯の時間になっていて部屋でゆっくりする間もなく
「鏡華、降りてきて」
と二階にいた私は一階へと降りていった。
 私と姉二人はよく似ていて母とも私たちはそっくりだった。食事の時の箸使いにしても示し合わせたように、同じ動きをする私たち。それが、ずっと一緒に暮らしていたからなのか、同じ家族だからなのかはよく分からないが私たちの家族は近所の人からもよく似ているとのことで評判だった。
 私は夕食を済ませて自室へと戻った。さっそくお婆さんにもらった説明書を読んでみる。
「なになに、“これは呪う相手を分裂させてノイローゼにするための薬です。使用上の注意をよく読んでご使用ください”か分裂ってのがよくわからないけどとりあえず使ってみようっと♪」
ベットに座って手に薬と用意した水を持って自分の肌フェチとしての気持ちを埋められる感動に震えながら、私は薬を飲み干した。飲んだあと試しに手を開いて閉じてとしてみても何も起きない。
「あれ、おっかしいなー」
と少し待つと足の先から妙な感覚がして、それが膝、太もも、腰を伝って、下腹部にまで来た。それと同時に頭からも何かが抜け出していく感じがして、さなぎがからを抜け出しているかのような変な感覚が頭の方から足に向かって動いていった。
「ふぇ、なにこれ、うーっ、ぎゃっ」
いままで、変わるはずのなかった手と頭との距離の感覚が徐々に離れていって、それとは別にもともとの手の感覚はそのままある、胸の感覚も腰の感覚も頭自身の感覚もどんどん腰の方に移動していってそれとは別にもともとの感覚はそのままという変な状態だった。また、鏡華は徐々に降りていくもう一つの感覚に、意識が宿っていることが分かってその存在とも鈍い意識の共有をしているのがわかった。その意識からは自分の感覚が上の方に逃げていくように感じられて実際自分も体が持ち上げられてベットの後ろの方に押し出されているのを不思議に思っていた。鏡華は自分の足がどんどん伸びていくように見えていて足の先から足が生まれ新しい膝が生まれ、太ももと腰とさっきまであった変な感覚が別の体として作られていく様子を目撃してしまった。
「なによ、これっ、はっ、あぁん」
 足から生えてきたものは鏡華自身で間違いなく、もう一人の鏡華からも自分が増えたという認識が意識共有で届いていた。
「あんた、だれ?」
「そっちこそ、だれ?」
意識共有の相手からこちらの頭の中を探られているような感覚がしたが、自分も同じように相手の頭の中の探れるところを探っている。これから、この女の子の肌が触れるとなると、変な気持ちになってくる鏡華だったが、相手も同じようにこちらの体の腰やお腹、首筋を見つめるのに従って心臓が飛び出しそうなほどドキドキしているのが伝わって来る。
 私が何が起こったのか調べようと、説明書の方に行くともう一人の鏡華も同じようにこちらにやって来る。自分と同じながらいつもはいないはずの存在に変に意識を向けて、説明書を読みすすめた。
「“この薬を飲んだ人は分裂の呪いにかかります。呪いの効果は一生続き”」
「一生、そんなことって」
と言ったのは隣にいたもう一人の鏡華だった。
「続きを読むよ、“どんな薬でも呪いを解除することはできない。呪いを一時的に解除する方法はあるがそれは…”」
「なに、続きは」
「言いにくいよっ、“分裂した二つの存在が同時にエッチな気持ちになることだ…”」
「なっ…、それから?」
もう一人の方はエッチという言葉に動揺したようだったが、私は話を続けた。
「“エッチな気持ちになると、ほぼ一日呪いの効果が解除される。だが、エッチをしてから一日が経つと呪いの効果は元に戻る。”ってさ」
「なによ、あのお婆さんなんてものくれたんだよ」
「ぅう、こんな私が分裂してるなんて姉さん達に隠し通せるわけない。」
「見つかっちゃったら、一生変なもの扱いされる。」
「「どうしようぉーー」」
説明書を放り出して、鏡華たちは姉たちの対処法を考え始めた。
「とりあえず、二人の鏡華がいるから、食事も二倍必要だし」
「トイレも二回行かないとだし着替えも二つ用意しないとだし」
「いつも使ってるのはあたしの化粧水なんだから、あんたは使わないでよね」
「なに、私のだから、そっちこそ勝手に出てきて私の使うなって」
険悪な感じになりそうなのでこれ以上はやめておこう。と二人は思った。
「「あぁ、絶対にばれるよ、なんでこんなことに!!」」
二人とも途方にくれているのに、下の階にいる母から恐ろしい言葉が聞こえた。
「鏡華、お姉ちゃん達終わったから、早くお風呂に入りなさい」
我が家では、姉が一番先にお風呂に入ることが決まっていて、それから次女、私という順番で、その後が母と父だった。つまり、私がここでお風呂を遅らせるというのは家族に対して迷惑になるし、かと言って入らないと言ってしまうと今日一日の疲れをどこに持っていけばいいのかと、鏡華たちの間でケンカになりそうな予感がした。
「見つからないようにしないと」
「あんたは、隠れて降りて私はお風呂入ったこと、母さんに伝えないと」
「なっ、そっちが隠れる方でしょ、私が母さんに伝えるからさ」
「「うぅ、(そっちが納得してくれれば…)じゃあ、ジャンケンで決めよう」」
とジャンケンをしてみるが、何度も相手の腹の読み合いをしてそれでも、同じ人間だからか引き分けが続いてしまう。
「しかたない、そのまま行こう」「ああ、なんで決まんないだよ」
二人は勝負がつかないことに落胆し、ひっそりと二人とも風呂場に向かうことに決めた。なんでこそこそしないといけないんだという思いを二人とも持っていたが、口には出さず見つからないように腰を屈めて静かに階段を下りていった。
「ふぁっ、へんなとこ触んなんないでよ」「だって、この階段が持つ所ないんだよ」
風呂場に入って母さんにお風呂に入ることを伝える。声が二重に聞こえたことに母は疑問を持たなかったのが良かった。だが、こんな寿命が縮むようなこと何回もしていられないと鏡華二人は思っていた。
 服を脱ぎ始めると、お互いの体が視界に入ってきた。いつもの自分の体なのだが、これから遠慮なく触ることが出来ると思うと、どことなく変に感じてしまう。胸はBカップで大きくないし腰のくびれも平均的だと思う特に強調されている場所もないのに、その肌ツヤの良さとほのかに香る柔軟剤の香りに心臓だけが別の生き物みたいに感じてしまう。
「よかったの?二人で入ることになったけど」
「そっちこそ、よかったの?」
「私は別にいいんだよ」
「じゃあ、私もいいよ知ってるでしょ?」
緊張からかうわずった声を出してしまう。お互いに緊張してることを知らせているようで何故か悔しい。



後編に続く

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【 2017/02/20 19:28 】

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