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水鏡という人
とりあえず書いてみたもの設定とかは特に考えてないです。【非エロ】
ではどうぞー


 昔、一人の祈祷師がとある都の中にいた。その都は人心を失って、今にも滅びそうだったが、この世ならざる力の持ち主によって支えられていた。
「ああ、この都はもう終わりです」
「そうだ、そうだ、この都は天まで達する罪にまみれた。裁かれねばならない。」
「誰にでしょうか、それは誰に?」
「私にもわからぬ、だが天におる人は、それを知っておるはずじゃ」
「では、一体いつ裁かれるのでしょうか?」
そのような問答が、その都の知者達によって行われていた。

 だが実際のところは、誰にもわからなかった。明日世界がなくなっていも良いように準備しているものたちにとっては、準備をせず呆けているものたちの身を案ずることに、心力を注いでいた。
 そして同じ頃、その都の一人の知者がこの世は終わるのではなく新しく浄化されるのだということを言い始める人がいた。その人の名を安倍晴明という。その都の人には彼の人また、あの人と呼ばれていた。彼は、日に日に力を増し、大いなる浄化のために力をつけねばと自分自身を鍛錬していた。そこに、大いなる鬼と呼ばれる人がやってきた。
「晴明や、なぜそなたは、この世に思いを抱いているのだ。そこから離れようとはしないのか、この世より広い世界を見ないのか?」
そう言った人は不思議な妖術を使う水鏡という人だった。その水鏡は、他の人の目に二人に分かれたり三人に分かれるという身分けの術というのに長けていた。つまり後の分身の術であり、晴明はその人からその術を学んだ。大いなる鬼である水鏡は晴明に再び尋ねた。
「晴明や、なぜそなたは、この世に思いを抱いているのか?」
「黙れ鬼よ、そなたの力など殺して奪い取ってくれる」
 水鏡は小さく笑いできるものならやってみろと言うように、短刀を持って晴明に挑んできた。敵の足は速く晴明は目で追うのがやっとである。気を抜いて姿を見失えば、着ていた衣の一つを敵の短刀で裂かれてしまう。今まで、数々の鬼と戦ってきた晴明だったが、いきなり斬りかかられたのは始めてだったので晴明は自分の油断を悔いた。水鏡からの攻撃を避けつつ晴明は馬車に残していた長刀を取りに急いで戻った。長刀を取った晴明はその刀身で素早く攻撃する水鏡の体を返し斬りして斬りかかった。確かに刀身に生身を斬る感覚があったのに当人の水鏡は晴明から数えて晴明が持っている刀4つ分の距離にいて、晴明を嘲っていた。
「ふふ、慢心するわけではないが、そなたにこの術は破れぬ」
 晴明は怒りに任せて斬りかかったが、ことごとくその水鏡の足の速さとたとえ斬ったとしても何故か別の場所で再び現れる水鏡にほとほと嫌気が差していた。
「なぜ、斬られぬ!!」
 水鏡はそんな晴明をあざ笑っていた。
「だが、流石に見込みのある、これまでわれに斬りかかってこれほど長く生き延びたものもいない」
「何だそれは」
 晴明は普段から刀に触れているわけではないので、ある程度斬りかかって晴明自身の体力がなくなれば敵の出方を見て敵の不意をつくということをいつもの鬼退治で行っていた。今回もそのようにしようとしたが、生憎水鏡の方から攻撃を仕掛けてこようという気はないようだった。
「刀を捨てよ、わしもこの短刀をしまおうぞ」
と晴明が見るとさっきまで水鏡の手にあった刀はあっというまに消えていった。晴明もそれを見て刀を馬車の中の戻すべき所に戻した。
 だが依然として、この水鏡という妖術使いの女は信用できぬと警戒を緩めずにいた。


 そち、紙を持ってはおぬか
「ほれ」
と言って晴明は自分が持っていた紙を水鏡に渡した。
 そち、はさみは持っておらぬか
「ほれ」
と言って晴明は持っていたはさみを水鏡に渡した。
 水鏡は紙を人形に切りよく見ておれよと自信げに人形の紙を地面において印を結んだ。そうするとその人形はたちまち水鏡と同じ姿になり水鏡と晴明のいた方に歩いてきて
「どうじゃ」
と言った。
「ほれほれ、我慢などせんでよいから術についてわれに訊くのじゃ」
とまるで訊くのがさも当然のように水鏡は言ってきた。
 晴明は多少自分の術のほうが優れているという自負はあったが水鏡に身分けの術の真髄について訊いた。


 その後、晴明は身分けの術と式神の術を体得し、それを使いこなすまで水鏡に鍛えられた。ある程度水鏡と同等の力を得るまでになると晴明は水鏡に尋ねることをした。
「ことに、この世やこの都というものはなぜに、げに、恐ろしいところなのだ?」
「それはわしも知らぬ、つまらぬことを訊くな」
 そうして、晴明は黙り込んだ。
「だが、そちのことじゃからその真髄をも見つけ出すのじゃろうな、そうでなければ面白くない」


 その後晴明は都で一番の陰陽師になり後の人の知るところとなった。


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【 2017/11/21 21:07 】

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