とりあえず書いてみたもの設定とかは特に考えてないです。【非エロ】
ではどうぞー 昔、一人の祈祷師がとある都の中にいた。その都は人心を失って、今にも滅びそうだったが、この世ならざる力の持ち主によって支えられていた。 「ああ、この都はもう終わりです」 「そうだ、そうだ、この都は天まで達する罪にまみれた。裁かれねばならない。」 「誰にでしょうか、それは誰に?」 「私にもわからぬ、だが天におる人は、それを知っておるはずじゃ」 「では、一体いつ裁かれるのでしょうか?」 そのような問答が、その都の知者達によって行われていた。 だが実際のところは、誰にもわからなかった。明日世界がなくなっていも良いように準備しているものたちにとっては、準備をせず呆けているものたちの身を案ずることに、心力を注いでいた。 そして同じ頃、その都の一人の知者がこの世は終わるのではなく新しく浄化されるのだということを言い始める人がいた。その人の名を安倍晴明という。その都の人には彼の人また、あの人と呼ばれていた。彼は、日に日に力を増し、大いなる浄化のために力をつけねばと自分自身を鍛錬していた。そこに、大いなる鬼と呼ばれる人がやってきた。 「晴明や、なぜそなたは、この世に思いを抱いているのだ。そこから離れようとはしないのか、この世より広い世界を見ないのか?」 そう言った人は不思議な妖術を使う水鏡という人だった。その水鏡は、他の人の目に二人に分かれたり三人に分かれるという身分けの術というのに長けていた。つまり後の分身の術であり、晴明はその人からその術を学んだ。大いなる鬼である水鏡は晴明に再び尋ねた。 「晴明や、なぜそなたは、この世に思いを抱いているのか?」 「黙れ鬼よ、そなたの力など殺して奪い取ってくれる」 水鏡は小さく笑いできるものならやってみろと言うように、短刀を持って晴明に挑んできた。敵の足は速く晴明は目で追うのがやっとである。気を抜いて姿を見失えば、着ていた衣の一つを敵の短刀で裂かれてしまう。今まで、数々の鬼と戦ってきた晴明だったが、いきなり斬りかかられたのは始めてだったので晴明は自分の油断を悔いた。水鏡からの攻撃を避けつつ晴明は馬車に残していた長刀を取りに急いで戻った。長刀を取った晴明はその刀身で素早く攻撃する水鏡の体を返し斬りして斬りかかった。確かに刀身に生身を斬る感覚があったのに当人の水鏡は晴明から数えて晴明が持っている刀4つ分の距離にいて、晴明を嘲っていた。 「ふふ、慢心するわけではないが、そなたにこの術は破れぬ」 晴明は怒りに任せて斬りかかったが、ことごとくその水鏡の足の速さとたとえ斬ったとしても何故か別の場所で再び現れる水鏡にほとほと嫌気が差していた。 「なぜ、斬られぬ!!」 水鏡はそんな晴明をあざ笑っていた。 「だが、流石に見込みのある、これまでわれに斬りかかってこれほど長く生き延びたものもいない」 「何だそれは」 晴明は普段から刀に触れているわけではないので、ある程度斬りかかって晴明自身の体力がなくなれば敵の出方を見て敵の不意をつくということをいつもの鬼退治で行っていた。今回もそのようにしようとしたが、生憎水鏡の方から攻撃を仕掛けてこようという気はないようだった。 「刀を捨てよ、わしもこの短刀をしまおうぞ」 と晴明が見るとさっきまで水鏡の手にあった刀はあっというまに消えていった。晴明もそれを見て刀を馬車の中の戻すべき所に戻した。 だが依然として、この水鏡という妖術使いの女は信用できぬと警戒を緩めずにいた。 そち、紙を持ってはおぬか 「ほれ」 と言って晴明は自分が持っていた紙を水鏡に渡した。 そち、はさみは持っておらぬか 「ほれ」 と言って晴明は持っていたはさみを水鏡に渡した。 水鏡は紙を人形に切りよく見ておれよと自信げに人形の紙を地面において印を結んだ。そうするとその人形はたちまち水鏡と同じ姿になり水鏡と晴明のいた方に歩いてきて 「どうじゃ」 と言った。 「ほれほれ、我慢などせんでよいから術についてわれに訊くのじゃ」 とまるで訊くのがさも当然のように水鏡は言ってきた。 晴明は多少自分の術のほうが優れているという自負はあったが水鏡に身分けの術の真髄について訊いた。 その後、晴明は身分けの術と式神の術を体得し、それを使いこなすまで水鏡に鍛えられた。ある程度水鏡と同等の力を得るまでになると晴明は水鏡に尋ねることをした。 「ことに、この世やこの都というものはなぜに、げに、恐ろしいところなのだ?」 「それはわしも知らぬ、つまらぬことを訊くな」 そうして、晴明は黙り込んだ。 「だが、そちのことじゃからその真髄をも見つけ出すのじゃろうな、そうでなければ面白くない」 その後晴明は都で一番の陰陽師になり後の人の知るところとなった。 終 続き |
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前編からの続き
息をすると温い空気が体に入ってくる。湯気のかかったもう一人の鏡華の顔を見るがこちらの顔には目もくれず、私の体を舐めるように見ている。目を合わせないことに不満をもらすが、私の目ヂカラが強いからだと相手にしない。私も目を合わせていられる自信がないゆえにそれ以上何も言わない。鏡華の肌は先程も言ったが、きめ細かくさらさらとしていた。相手の膝などに指を這わせると、こそばゆいと目の前の鏡華は笑みを浮かべ、自分が触られると同じように笑いがこぼれる。体は湯船に浸かっているため温かい。足は相手の足を挟む形で四つの足が横並びにくっついている。 また、どちらが先に体を洗うか(スポンジが一つしかないため)でお互いに言い合いになり、相手をくすぐってどちらが先に声を上げるかで決めようということになる。これで遠慮なく相手の体に触れることができると二人の鏡華は気分が高揚する。 「さきに、笑ったほうが負けだからね」 「言われなくても、そっちこそ、すぐ負けないでよ」 あらためて考えると自分が弱い、すぐ笑う所って、どこだろうかと考えながら相手の肌に指を這わせていく脇の下とか弱いってよく聞くけど、と脇の下に指を持っていく。そこをくすぐると相手も同じく脇の下に指を持っていってくすぐってくる。声を出すまいと口を閉じていると鏡華は太ももで指を這わせはじめた。自分の体にも彼女のくすぐりが染み込んできて思わず笑いそうになってしまう。自分が彼女に与える刺激と同じだけの刺激が自分に味わわされてしまう。胸の下の所を擦られると鏡華は耐えられなくなって小さく悲鳴を漏らしてしまう。相手に聞かれていないと思っていても、向こうも同じように悲鳴を聞かれていないと心で思っていることはバレバレだった。お互いの意識共有をしている二人はそれぞれ本音を言葉に出さず、心を相手に悟られまいと相手のくすぐりに耐え、さらに相手から心の底を勘ぐられまいと必死で相手からの心理戦に耐えていた。 ほんのちょっとの差で私が先に笑ってしまい。勝者の鏡華は勝ち誇った顔をしていた。途端にこらえていた笑いを漏らしだしたが、勝者の余裕からか、こちらを気にせず遠慮なく笑っている。 勝者の鏡華が先に体を洗って、敗者である私はその後に続いて洗う。勝者の鏡華は湯船につかりながら、こちらを見て私の体を目で這っていく。 「そんなに、見られたくないんだけど」 「失礼、後ろから自分の体を見られる機会ってなかなか無いから」 お風呂ではくすぐり合い以外は特に何もなく、お風呂から出ると狭い脱衣所で体を拭き合い、お互いの服を着て、また、静かに二階へと戻っていく。 二階に戻って、最初にしたことはもう一度、薬の説明書を確認したことだ。別の鏡華はベットの上で一日の疲れを癒している。私が 「やっぱり、元に戻るためには両方が……エッチな気分になるしか…ないみたいだけど」 「それしかないなら、仕方ないよー。やるなら早く終わらせちゃおうよ」 「早くって…」 鏡華はこれからするだろうことに、顔を赤らめそんなファーストキスとか自分相手だったりエッチな気持ちになろうとすればいつも恥ずかしくて考えないようにしている場所にも手を触れなければならないだろうし、不安な気持ちより、なんでこんなことにという戸惑いの方が気持ちの大半を占めていた。 「そっちの私は、乗り気なのが癪に障るんだけど」 「私も早く元に戻りたいだけだから、変に思わないでよ」 えーっ、と信用できない気持ちを顔に全面に出すも、相手からの応対は冷たいものだった。同じ自分だから上手に絡みをやり過ごすのはどちらも得意らしい。姉さんからもよくされているから、反射的にしたことだろうけど。 あまり目を合わせないようにして、お互いベットに上がっていく。慣れてない手つきで服の上から相手の体を撫で、時折チラリと相手の顔を見る。嫌そうな顔は私も同じだろうと想像する。変な親近感が逆に興奮を起こすのか相手の体を触っていると変にゾワゾワした感じが背中からやって来る。それは、触られていることよりもサラサラした肌に触れている事からくるものだが、今度は逆に触られていることに、肌から温かい感覚が来る。 「あたし、別に感じてないから」 「あたしだって、そっちこそ変な気、起こさないでよね」 と牽制してスカートの中から太ももに触れる。もちろんそんなこと他人からされたことなどないため、二人は終始、変な感覚に悩まされることになる。相手から愛されているわけでもないのに、触れられているだけで安心感と幸福感がお腹の奥の方から沸き上がってくる。 「バカっ、なにしてんの、早く済ませてよ」 「そっちこそ、変に気持ちいいとこ触らないでよ、声漏れるの嫌なんだから」 二人ともよく知った身体なので、どうされれば気持ちよくなるかは知っている。だが、それをすれば相手から変な気持ちになると非難をされ、どうしたらいいのかという気持ちに二人の鏡華はなってしまっていた。相手の鏡華のシャツの中へ手を差し込むと相手の腕も自分の身体をシャツの中から触ってくる。相手の首元と胸の上を撫でると自分の同じ部分も同じ刺激を受ける。服が膨らまないように気をつけると自然と体同士が近づくことになりお互いの息がかかる位置まで近づく、そうならないように顔を背けてお互いの服の中を触っていく。 「そろそろ、キスとかしたほうがいいんじゃない?」 「奇遇ね、私もそう思ってたところだよ、そっちからしてくれていいし」 「なっ、そっちの私だって、された事ないのに恥ずかしいことさせないでよ」 「えーっ、そんなの私だって同じだし、こんなのすぐできるもん」 お互いキスは気持ちいいという知識は知っていても、経験はしたことなどない。どうなるか分からないことは恥ずかしさのほうが勝るので、それは自分自身相手でも同じなのだ。 目を見ないようにもう一人の鏡華の口の端に唇を押し付ける。ドクドクする心臓とじんじんする下腹から恋人でもないのにキスをしたという罪悪感が責め立て、あんたも同じことするんだよという、被害者な目線を相手に送る。私が目を瞑ると、口の端に彼女の唇が触れているのを感じる。それはすごく長い時間触れていたような感じもあったけど、あっという間にそこから離れていってしまった。限界までバクバク言っている胸の奥は嘘をつけないとどこか冷静に感じながら、意識を盗み見られている感覚から相手も似たように感じているのを察する。 「てっ、こんなに、ゆっくりしてる場合じゃないって」 「なっ、そっちがゆっくりしてるからでしょ」 「そっちだって」 と力なくお互いに責任を押し付けてようやくベットに二人で並んで横になることになる。 「で、どうすんの」 「そんなの、知らないし」 「調べてよ」 「そっちも調べろっての」 スマホごと分裂していたので、お互いのスマホでそれぞれこれからどうするか調べる。 必要な情報に行き着くと、どちらも顔を真っ赤にして 「そんなこと、できるわけないじゃん」 「これ、こんなのしたって、嫌な気分にしかなんないって」 聞かれないように小声で呟いてお互いの様子を知るために質問した。 「そっちは何か見つかったの?」 「あんたも、何かあったんじゃない?」 声の調子がおかしかったが、それには触れない。 「何からすればいいのかな♪」 「そうだね、分かんないよ♪」 見え透いた嘘だが、自分から仕掛けるのは良くないのは目に見えていた。こちらからは何もせずに向こうから自然にそれっぽいことをやってもらうのが一番早い。 「「私、そっちのことは疎いから、あんたがやってくれると嬉しいな」」 最後の方には声が裏返っていた。そんなに言われたら仕方ないと、覚悟を決めて 「「そんなに、言うんだったら仕方ないよね」」 と言い訳を言って、緊張しながらお互いの一番敏感な部分に指を持っていく。 「ここが、一番気持ちいいとこらしいけど、何も感じないよ」 「なんだろ、ここって触っていいとこなのかな」 性知識が小学生から進んでない二人にとって性感帯という言葉も聞いたことないだろうと思わずにはいられない。 「敏感なとこにはいきなり触れないであ、アソコのまっ、周りを触るって」 「……そ、そっか」 初めての相手が自分だというのも因果な話だが、薬をもらって飲んだのは自分だったので文句は言えない。乾燥したそこを擦っていると、先ほどの変な気分がぶり返して心臓の鼓動が激しくなる。明らかに恋をしてるのではないその反応に、戸惑いが増していくが一つ戻るためには仕方ないので考えないでその行為を続ける。皮の中から触って欲しそうにジンジンする敏感なところを押すとジワーっと下から上に快感が昇ってくる。 「今なんか来たっ」 「こんなの早く終わらしたいぃ」 奥から液体が溢れてくるほど愛撫を続けると、二人の興奮も小さな声が漏れるほどに高まっていた。 「あんた、気持ちいいからって手加減してる、早く終わらせてよ」 「そっちだって、手加減してるじゃん、私だけじゃないよ」 鏡華はその言葉で制限を突破らって、気持ちいい所への刺激を加速していった。どちらの鏡華も昇ってくる何かに罪悪感を感じて、早く終わらせたいという気持ちで恥ずかしさを紛らわせていた。時折漏れる声は刺激に快感を感じている声なので、もう一人に聞かれないように服で声を殺して、徐々に高まってくるその感覚を無くそうとイキそうになると別の場所を触り、それが返って二人を生殺しにしてしまっていた。慣れていない二人にとって薬の呪いの解除はそれだけでとても長い道のりだった。 「なかなか、イケないっ」 「うぅ、敏感なとこを触り続けるってできない」 刺激が足らなくてもう一度、唇を合わせてキスをする。身体を触れられて快感は感じているのだが、それがゴールに行かない分、体力ないのに無理だろうという気持ちが強くなる。 「あ〜、早くしてぇよ〜」 「あぁん、あたしにぃい、言わないでぇ、はぁんっ」 体を近づけて空いている腕でもう一人を抱きしめる。胸と胸の距離がゼロになり乳首が触れ合う 「また、変な感じ」 「もうやだよ〜」 極度の興奮に敏感な部分も皮から出てきて、下着が擦れるだけでビリビリが体全体に広がる。こんなに敏感な部分を無遠慮に触れられでもすれば死んでしまうのではないかと言うほどで、もちろんどちらの鏡華も触れるはずもなく。 「早くイかせてよ!!」 「そっちが先でしょ!!」 仕方なく、アソコの周りを撫でていると不意にそこからの感覚が爆発してしまうのではないかという感覚が身体を包みはじめた。 「あっ、あーー、いやっー、んんっ、んんーーー」 「何っ、あぁ、あっ、んんーーー、いあっーーー」 目の前がスパークして小さく腰が動き、二人はお互いの手によって初めてイカされてしまった。初めてのそれに呆然としてしまって、二人は気を失ってしまった。 意識を取り戻すと、鏡華は一人に戻っていた。やったーと感激に浸る間もなく二人いた時の記憶が重なっていることに気づく二人が融合したために記憶も一緒に融合したのだろう。記憶が重なったため相手に抱いていた感情が筒抜けになり、鏡華はまた赤面してしまう。 だが、薬の効果は一時的に解除されたに過ぎない。もう一人の鏡華自身にまた会うのも一日もしないうちに起こることになる。その先のことを考えるとここにいる鏡華は憂鬱になったが、触れていた肌の感触を思い出して、それもいいかと自分を納得させるようにした。 「また、アレしないといけないかな」 鏡華は下を見て二人の液体で湿ってしまったシーツをどうやって母に見つからずに処理できるかを考え始めた。 後日談 「もらった薬って実はあの後、お婆さんがいっぱいくれたんだよねー」 「よし、二人になったから早速使ってみよう〜」 エメラルドの薬をもらってからしばらくたった頃、鏡華はもう一度あのお婆さんに会い、今度はビン詰めされた先の薬をもらった。とりあえず二人で10錠ずつ薬を持って飲んでみようと二人の鏡華は今、話し合っていたところだった。 「どうなるんだろう?」 「一人10錠だから20人に増えるんじゃない。ゴクッ」 「ゴクッ」 と軽い気持ちで薬を飲むと、前の時と同じように身体が上半分と下半分で分かれていき、その別れた身体たちがまた別の二つの身体へと分裂していった。20人で止まると思っていた人数はその数を超えても増えていって鏡華たちは自分たちの分裂した彼女自身たちの数に圧倒されてしまっていた。 「なにぃー、どんどん分裂していくっ」 「まさか、これって20人よりもっと多くなるのっ!?」 「これだったら、あんなにいっぱい飲まなくても良かったのに!!」 「そんなの、今更だよ。こんなに増えたら家の中じゃ収まらなくなっちゃうよっ」 それぞれの鏡華がお互いに言い合い始めて鏡華のいた二階の部屋は場所がなくなり一階へと鏡華が押し出されていく、その全ての鏡華の顔が戸惑いと自分への呆れからくる顔へと変わっていて、それぞれ微妙に違うものの鏡華たちの髪型と部屋着である服と手に持っているスマホはすべて同じものに見えた。 元の一人に戻るためにはそのすべて鏡華たちが同時にイかなければならなくなり、それがもしも偶然に起こったとしてもそれだけで途方もないことだった。 ご感想などお待ちしております。 ではまたー |
お久しぶりの明後日の狩人です。
今回は肌フェチな女性がもし分裂したら的なのを作りました。 喜んでもらえると嬉しいです。ついでにノクターンノベルズの方にも上げておきます。 感想の方はコメントお願いします。 ではどうぞー 「ペット飼えば?」 友達の椎奈が私の行き場を失っている情熱に文句を言ってきた。 「でもさ、やっぱり私が撫でたり、抱っこしたり、ご機嫌取ったりな、妹が必要だと思うんだよ」 と私は言う。思春期にありがちな妹や弟が欲しいというありがちな思考パターンだ。人間誰しも一人の空間が続いている環境だと人恋しさも出てくるもの。私、野水 鏡華(のみず きょうか)はその妹欲しさに、友人である黒川 椎奈(くろかわ しいな)に相談をしていた。 「そんな簡単に、子供なんてできないんだから、ペットで我慢しなよ」 椎奈はそういうが、私は人肌の体温や髪のつやつや、肩や胴体の曲線を自分の指先で味わうのが一種の習慣のようになっていて、それ無しでは砂漠で水筒をなくしたように体が乾いていってしまうのだ。 「この、肌フェチが!寄るな!」 私が女の子の肌が好きだというと、椎名は変なものを見る目でこっちを見てくる。普通は男の肌が好きなもんなのという椎名の言葉に納得はするが、私の求めているものはそうではないのだと複雑な気持ちになる。 「妹がいればさ、朝昼晩触り放題じゃん」 と私が言うと 「お前の妹がかわいそうだ」 と椎奈がいう 「そうかな」 私には姉は二人いるのだが妹はいない。私が一番最後に生まれてきたので妹が欲しいと父に頼んでも、そうだなー、と曖昧な答えしか帰ってこない。姉たちは何かと忙しいらしく、いつも一緒にいようというとどこかに消えていってしまう。 「もー、私だっていっしょにお風呂入ったり、髪をとかし合ったり、一緒に眠る妹が欲しいんだよー」 と日頃溜まっていたものを大声で吐き出していると、座っていた公園という場所とは不釣合いな、占い師風なお婆さんがこちらを見ていた。ビクッと背筋が寒くなったけどニタニタと笑うお婆さんが持っていた不思議な雰囲気に私はその場所から動けずにいた。どことなく怖い感じを醸しながらお婆さんは話しかけてきた。 「お嬢さん、なにを悩んどるのかのぅ」 しわがれた声でそう聞かれてどうすればいいのか分からなくなった。 「あの、私、人の女性の肌が好きなのですが、姉たちにもそっけなくされてしまって…」 「そうかいそうかい、大変じゃのー」 お婆さんはそう言い、それから持っていた袋から何かを取り出して 「お前さんにぴったりかどうか分からぬがいいものがある」 とエメラルドの色をした薬のようなものを取り出した。 「これはな、昔の呪術者が作った相手を呪う為の道具だが、お前さんにはそれなりに役立ちそうだから、やろうと思っておる」 お婆さんは私の手のひらにちょんとエメラルドの薬を落として 「これが詳しい説明書じゃ」 と古い紙を手渡してきた。ご丁寧にどうもと心の中でつぶやき 「お婆さん、ありがっ」 と言った時にはお婆さんはその場所にはいなくなっていた。 「なんだったんだろ?」 家に帰ると夕飯の時間になっていて部屋でゆっくりする間もなく 「鏡華、降りてきて」 と二階にいた私は一階へと降りていった。 私と姉二人はよく似ていて母とも私たちはそっくりだった。食事の時の箸使いにしても示し合わせたように、同じ動きをする私たち。それが、ずっと一緒に暮らしていたからなのか、同じ家族だからなのかはよく分からないが私たちの家族は近所の人からもよく似ているとのことで評判だった。 私は夕食を済ませて自室へと戻った。さっそくお婆さんにもらった説明書を読んでみる。 「なになに、“これは呪う相手を分裂させてノイローゼにするための薬です。使用上の注意をよく読んでご使用ください”か分裂ってのがよくわからないけどとりあえず使ってみようっと♪」 ベットに座って手に薬と用意した水を持って自分の肌フェチとしての気持ちを埋められる感動に震えながら、私は薬を飲み干した。飲んだあと試しに手を開いて閉じてとしてみても何も起きない。 「あれ、おっかしいなー」 と少し待つと足の先から妙な感覚がして、それが膝、太もも、腰を伝って、下腹部にまで来た。それと同時に頭からも何かが抜け出していく感じがして、さなぎがからを抜け出しているかのような変な感覚が頭の方から足に向かって動いていった。 「ふぇ、なにこれ、うーっ、ぎゃっ」 いままで、変わるはずのなかった手と頭との距離の感覚が徐々に離れていって、それとは別にもともとの手の感覚はそのままある、胸の感覚も腰の感覚も頭自身の感覚もどんどん腰の方に移動していってそれとは別にもともとの感覚はそのままという変な状態だった。また、鏡華は徐々に降りていくもう一つの感覚に、意識が宿っていることが分かってその存在とも鈍い意識の共有をしているのがわかった。その意識からは自分の感覚が上の方に逃げていくように感じられて実際自分も体が持ち上げられてベットの後ろの方に押し出されているのを不思議に思っていた。鏡華は自分の足がどんどん伸びていくように見えていて足の先から足が生まれ新しい膝が生まれ、太ももと腰とさっきまであった変な感覚が別の体として作られていく様子を目撃してしまった。 「なによ、これっ、はっ、あぁん」 足から生えてきたものは鏡華自身で間違いなく、もう一人の鏡華からも自分が増えたという認識が意識共有で届いていた。 「あんた、だれ?」 「そっちこそ、だれ?」 意識共有の相手からこちらの頭の中を探られているような感覚がしたが、自分も同じように相手の頭の中の探れるところを探っている。これから、この女の子の肌が触れるとなると、変な気持ちになってくる鏡華だったが、相手も同じようにこちらの体の腰やお腹、首筋を見つめるのに従って心臓が飛び出しそうなほどドキドキしているのが伝わって来る。 私が何が起こったのか調べようと、説明書の方に行くともう一人の鏡華も同じようにこちらにやって来る。自分と同じながらいつもはいないはずの存在に変に意識を向けて、説明書を読みすすめた。 「“この薬を飲んだ人は分裂の呪いにかかります。呪いの効果は一生続き”」 「一生、そんなことって」 と言ったのは隣にいたもう一人の鏡華だった。 「続きを読むよ、“どんな薬でも呪いを解除することはできない。呪いを一時的に解除する方法はあるがそれは…”」 「なに、続きは」 「言いにくいよっ、“分裂した二つの存在が同時にエッチな気持ちになることだ…”」 「なっ…、それから?」 もう一人の方はエッチという言葉に動揺したようだったが、私は話を続けた。 「“エッチな気持ちになると、ほぼ一日呪いの効果が解除される。だが、エッチをしてから一日が経つと呪いの効果は元に戻る。”ってさ」 「なによ、あのお婆さんなんてものくれたんだよ」 「ぅう、こんな私が分裂してるなんて姉さん達に隠し通せるわけない。」 「見つかっちゃったら、一生変なもの扱いされる。」 「「どうしようぉーー」」 説明書を放り出して、鏡華たちは姉たちの対処法を考え始めた。 「とりあえず、二人の鏡華がいるから、食事も二倍必要だし」 「トイレも二回行かないとだし着替えも二つ用意しないとだし」 「いつも使ってるのはあたしの化粧水なんだから、あんたは使わないでよね」 「なに、私のだから、そっちこそ勝手に出てきて私の使うなって」 険悪な感じになりそうなのでこれ以上はやめておこう。と二人は思った。 「「あぁ、絶対にばれるよ、なんでこんなことに!!」」 二人とも途方にくれているのに、下の階にいる母から恐ろしい言葉が聞こえた。 「鏡華、お姉ちゃん達終わったから、早くお風呂に入りなさい」 我が家では、姉が一番先にお風呂に入ることが決まっていて、それから次女、私という順番で、その後が母と父だった。つまり、私がここでお風呂を遅らせるというのは家族に対して迷惑になるし、かと言って入らないと言ってしまうと今日一日の疲れをどこに持っていけばいいのかと、鏡華たちの間でケンカになりそうな予感がした。 「見つからないようにしないと」 「あんたは、隠れて降りて私はお風呂入ったこと、母さんに伝えないと」 「なっ、そっちが隠れる方でしょ、私が母さんに伝えるからさ」 「「うぅ、(そっちが納得してくれれば…)じゃあ、ジャンケンで決めよう」」 とジャンケンをしてみるが、何度も相手の腹の読み合いをしてそれでも、同じ人間だからか引き分けが続いてしまう。 「しかたない、そのまま行こう」「ああ、なんで決まんないだよ」 二人は勝負がつかないことに落胆し、ひっそりと二人とも風呂場に向かうことに決めた。なんでこそこそしないといけないんだという思いを二人とも持っていたが、口には出さず見つからないように腰を屈めて静かに階段を下りていった。 「ふぁっ、へんなとこ触んなんないでよ」「だって、この階段が持つ所ないんだよ」 風呂場に入って母さんにお風呂に入ることを伝える。声が二重に聞こえたことに母は疑問を持たなかったのが良かった。だが、こんな寿命が縮むようなこと何回もしていられないと鏡華二人は思っていた。 服を脱ぎ始めると、お互いの体が視界に入ってきた。いつもの自分の体なのだが、これから遠慮なく触ることが出来ると思うと、どことなく変に感じてしまう。胸はBカップで大きくないし腰のくびれも平均的だと思う特に強調されている場所もないのに、その肌ツヤの良さとほのかに香る柔軟剤の香りに心臓だけが別の生き物みたいに感じてしまう。 「よかったの?二人で入ることになったけど」 「そっちこそ、よかったの?」 「私は別にいいんだよ」 「じゃあ、私もいいよ知ってるでしょ?」 緊張からかうわずった声を出してしまう。お互いに緊張してることを知らせているようで何故か悔しい。 後編に続く |
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エロなしです。
お久しぶりです。明後日の狩人です。 今回は、思いついたのをつらつら書きましてフェチ的な目線を重視して作りました。ツボに入ってなかった人はすみません。 反省はしないです。舞台設定としてはドッペルな感じの女の子とそれにつき合わされた不幸な彼氏という設定です。 彼女の方ですがはっきり言ってストーカーな感じです。怖いです。ではどうぞ〜 俺の彼女はドッペルゲンガー持ちだ。勝手にどこかしこで分身して襲って来る。 彼女の瞳の言い分では、両側から抱いて欲しいなんてめちゃくちゃな事を言ってくる。俺の方は両手を使ってめいいっぱい抱きしめているのにどこかから別の分身がやってきて、不満だと言ってくる。今日もそんなことを言われるのかと憂鬱に浸りながら、瞳との待ち合わせ場所にやってきた。彼女の方からデートの予定を設定されてわざわざ俺の予定を変更して来た。いいように使われている気がしてならない。 彼女が到着すると彼女の姿は帽子をつけて、オレンジのふりふりをつけたスカートをつけていた。トップスは短い丈のシャツだった。シャツの上にはニカッと笑う顔があった。この顔に騙されてなんどひどい目にあったか、思い出すだけでもイライラしてくる。 「今日は早かったんだな!」 いつもは10分遅れ20分遅れが当たり前だった瞳の行動に俺は慣れていたのでそう言っていた。 「いつもいつも、そんなに待たせてるかな?」 白々しく彼女はそれらしい事を言う。 「今日は遊園地だっけか?」と俺が聞く 彼女がすべてのスケジュールを決めているので(ただし費用は全て俺持ちだが)この遊園地のことも知っているわけじゃない。ルートを教えてもらわなければどこに行くかもわからなかった。 「えっと、中に入ったらまずコーヒーカップに乗って、船で海賊と戦うアトラクションをやって、ジェットコースター、その後観覧車に乗るって予定で」 「了解」 「ほとんどのアトラクションがさ。混んでるから結構回るのに時間かかるんだよねー」 俺の嫌そうな顔を見ても瞳はあっけらかんとしたまま 「それじゃ、チケット売り場はあっちだよ」 とはしゃいでいた。 チケット売り場ですらたくさんの人で混雑して並ぶのを余儀なくされる。俺の肩についている瞳は両手で俺の腕を自分の方にぐいぐい引っ張る。そんなに引っ張らなくてもいいだろうに、そう思っていると瞳は 「そういや、今日の髪型どうかなー(俺の名前)が気に入るかなと思ってきたけど。くせ毛残ってない?」 とこっちに顔を向けた。 彼女の髪型は俺の好みでドキッとしたが「いいと思う」と変に曲がったくせ毛も含めて言ってやった。「そっか、手鏡じゃ全部見えないんだよね?」と不吉な声が聞こえた。 俺が「えぇっ」という間もなく瞳はもう片方の俺の肩にしがみついていた。元の彼女を残したままだ。俺の頭の中で今日もまたかとほぞをかむ思いだった。逆側の瞳は俺の肩につき元々の瞳と同じように俺の腕をぐいぐいと引っ張る。瞳は自分の髪をもう一人に見せていた。そのために作った分身なのでその役目を果たせば消えて欲しいが、まだ俺の横にくっつきたいようだった。 「やっぱくせ毛残ってるよ」 そんなことより、両方から引っ張るのはやめてくれ! 「ああ、そうだな。ところでこのままだと、三人分チケットを買わないといけないからさ」 瞳は「だから?」と聞いてきた。 「こっちのやつを消して欲しい」 あいつはああそうだね、といい加減に俺に返事をして目を戻し自分の髪型を治すほうに集中していった。 これが俺の彼女がドッペル持ちだという事だ。何かあったら数が増えられたら、デザートをもう一人分余計に買わないといけなかったり、服を二人分欲しい(二つに人格が分裂してどっちか決められないらしい)といいだしたりする。出費がかさむので早急にやめていただきたい。 ようやくゲート前で消えた分身とさらばして、俺は瞳と最初のスポットであるコーヒーカップに行った。 「楽しい〜」 と瞳は言っていた。くるくると自分でコーヒーカップを回そうとする。 「ねぇ、(俺の名前)も手伝ってよ」 俺はいやいやながら手伝う、もし時間があればずっと彼女を見ていられるだけでいい、自分からなにか関わろうとするのは面倒くさかった。 「もう、力なさすぎ」 と俺を非難し彼女は自分でもっとコーヒーカップを回そうとする。当然自分の数を増やすことを考えるわけで、真正面にいた瞳が両脇にも出現した。右と左からハンドルを持っている俺の手ごとコーヒーカップを回そうとする。右にずれれば右の彼女にぶつかり左にずれれば左の方向の彼女にぶつかる。出口のないコーヒーカップで立つのも危ないほどのスピードで回され瞳は楽しそうだが俺はそうも言ってられなかった。 ようやく降りられた時にはゲーゲーと吐き気を催し、回復までに自販機からのコーヒーが必要になった。その後海賊と戦いジェットコースターに乗ることになる。 ジェットコースターに乗るために並んでいると彼女が生意気そうな顔をしたあと見えないところから腹に一発拳が飛んできて瞳が「よしっ!」という顔をした。加害者は絶対瞳だが姿が見えなかったので追求できない。俺はサンドバックか?どうやら並んでいる時の暇つぶしのためだったらしい。「誰だ〜」と言いつつ前に瞳が並んでいるのに後ろから首を絞めてくる。彼女のほうが身長が低いので俺の首にぶら下がる形での必殺技に俺はなす術がない「おまえだろ」という俺の声もかすれて聞こえていないようだ。耳をこっちに向けて聞き返してくる。「なんて言ったの?」彼女は胴に手を当てこちらを気にかけるふりをしていた。 ゼーゼー声を荒らげようやくジェットコースターの順番が来た。さすがにジェットコースターはベルトで身体を固定するから変なことをされることはないだろう。と一番前に座り降りてくるベルトを見て安堵していた。横ではうきうきした瞳の顔があった。 「待ったかいがあったよ」 と俺の犠牲の上にある待ち時間を嬉しそうに語っている。 「何かあったらしがみついてきていいんだからな」と自信のあるところを見せようとすると 「あんがと〜」と調子の抜けた返事をしてくる。 機械を動かし始めたガタガタという音が聞こえて、ジェットコースターが前に動き始める坂を登って一番上まで来るとキューーゥーと車輪が唸りスピードを上げコースターは駆け落ちていった。前方に螺旋形のレールが見えると視界と上下の感覚がぐるぐると回り始める目を回し元に戻るのを待っていると、また最高速度で振り回され体に遠心力がかかる。最初は楽しんでいた瞳だったが、徐々に笑い声から叫び声に声が変わっていき「ガァーアアーイヤーーー」と言っていた。 繋いでいた手をギュッと強く握って首を何回も横に振っている。ひときわ大きな声を上げたかと思うと突如俺の視界がなくなり前が見えなくなった。一瞬思考が止まったが要は彼女が俺の前に来て視界を妨げていたのだった。分身の瞳はシートベルトがないのに俺に必死に捕まり本体の方は相変わらずギャーギャーと悲鳴を上げている。流石に危ないだろうと俺に乗っかっている分身の方を見ると目をつぶって俺にしがみつき俺は瞳の胸に顔を埋める形になっていた。振り落とされそうになると死ぬ気で(実際落ちると死ぬので)俺にしがみついてくる。おい、守ってやりたいのはそうだがこれだと俺のほうが死ぬぞ。 全身を俺に密着させた状態のまま俺は瞳を助けてやりたい気持ちと、この分身を早く突き落としたい衝動に心を揺れさせていた。ようやく、ジェットコースターが終わると俺の上に乗っていた瞳は係員に見つかる前に逃げていってしまいどこかでその体を消滅させたようだ。瞳は俺に掴まっていた分身の記憶を融合させて俺の手を握りながら赤くなってしまっていた。俺もその様子に顔が赤くなり二人とも顔を逸らしたまま次の目的地まで歩いた。 「次は、えっと観覧車だ」 と瞳が言う。 「そうだな」 と俺も言い、さっきと同じ長い行列に並び俺たちの番が来るのを待っていた。あっという間だった先ほどと違い時間はゆっくり流れる。何か喋って欲しいがこちらから何か言うのも恥ずかしい。 「なんか、喋れよ」 俺が言うと 「えらそうに、命令するな!」 と言ってきた。 観覧車に乗り込むと声を出しにくい雰囲気に飲まれしばらく、無言の時間が過ぎていく。 「わたしだってさ、」 無言を破ったのは瞳からだった。 「わたしだって、普通の女のほうがいいの知ってるよ(俺)がそう思ってるの。」 「だったら」 と言ったとき、瞳の気配が二つに分かれた。俺が動揺していると、瞳は 「ああ、わたしも完璧にこれコントロールしてるわけじゃないんだよ。」 「さっきだって、やりたくてやったわけじゃないしさ」 「消えて欲しい時に消えてくれないし、来て欲しい時に来てくれないもん」 「記憶が戻ってくるから、分身の方をよく思ってないの知ってるし」 交互に思いを漏らしていく瞳たち俺は身体の上から下にりきみが消えてくような気がした。 「ほら、勘違いされるじゃん、早く消えてくれ!」 一方の瞳が強い口調で言う。 「ああ、なんかイラついてきた、そっちが消えてよ!」 もう一方も反対に負けずに言い返す。目を伏せている二人から感情が読み取れないが二人とも頭と腕をわなわなと震わせている。 二人して同時に音も立てずに立ち上がると一方がもう一方の瞳にいきなり殴りかかる。殴られそうになったほうが力の入っていない拳を掴んで体重をかける。逆の腕は手のひらを広げて相手の手を押さえつけている。 「あんたの方が偽者でしょ」 「そっちが何言ってんの」 と手を上げられない分を言葉で吐き捨てる。 「おいおい、いい加減にやめろって」と俺が言うと 「黙れ」「黙って」と両方から吠えられる。俺が何したっていうんだ。 「ああ、簡単にうきうきして何が楽しいの?」 「へえー、カレンダーにハート書いててさあ?」 両方の瞳から怒りのエネルギーがフツフツと湧いているのが分かる。もうここらへんで止めないと、嫌な気分にしかならない。 「後で聞いてやるからさ、瞳」 と俺が言うと 「そういや、(俺)はどっちが本物だと思うんだろ」 「ええ、それは簡単に分かる気がするけど(俺)だったら」 「「ねえ」」不気味なほど一緒に聞こえる二人の声 「「(俺)はこっちが偽者だと思うよね」」「ねぇ?」「ねぇ!?」 どっちに味方してももう片方から文句を言われる。俺はどっちも選べない状況だった。 「ねぇ、私のほうがこの服装に合ってるよね」 「えぇー、私よりそっちの私のほうが似合ってるわけないよね」 「だって」 「だって」 「「そっちの私よりわたしのほうが(俺)は愛してるんからね」」 自分の耳で聞いた言葉も、人の口から聞こえれば呪詛にしか聞こえない俺はこの時、瞳の心がガラガラ崩れていく音が聞こえた気がした。 ・・・ 「なぁ、瞳」 ・・ 「うるさい」 「なんでわたしから、彼氏奪うの信じらんない!死ね今すぐ死ね偽者なんだからいくらでも死んでッ!!」 瞳の中でスイッチが切り替わったのか、自分への呪詛を言い切ったあと、その感情の向きは俺に向かってきた。二人の瞳が不気味に笑い自分が見えていないように無視しこちらを向いたその様子で俺はこれからこの二人から歪んだ愛情を味わわされるのを察した。 「ねえ、何してるの私はここだよ」「「ふふふっ」」 後編はそのうちにではまたー コメントは下に書き込んでいただきたいと思いますー |